傷だらけ原発、10年延長? スペイン政権、公約撤回し運転か
欧州各国が燃料の輸入を減らし、発電コスト低減に努めるなか、スペイン政府はフランコ独裁時代(1939年~70年代央)に建設され、老朽化した原子力発電所を閉鎖するという選挙公約を覆し、運転継続を認める可能性が出ている。閉鎖すれば発電コストや安定供給面で問題が出るためという。
http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200906120022a.nwc
◆コストは優等生
欧州原子核委員会(NuPECC)スペイン代表や政府の原子力政策アドバイザーを歴任したセビリア大学のマヌエル・ロサーノ・レイバ原子物理学主任教授によると、現サパテロ政権は原子力発電からの撤退という選挙公約を撤回し、同国北部エブロ川沿いにある築38年のサンタ・マリア・デ・ガローナ原子力発電所(46万6000キロワット時)について今後10年の稼働許可を出す可能性がある。
政府は同原発の運転許可が失効する7月5日までに閉鎖するか、新たに10年の稼働許可を与えるか決定を下す予定だ。原子力安全委員会(CSN)は8日、安全要件を含む15件の条件を満たすことでガローナ原発に対し10年の運転延長を認める提言を産業省に提出した。
ロサーノ教授は「大統領がガローナ原発閉鎖に踏み切るとは思えない。1000キロワット時当たり36ユーロ(約4900円)で発電を行う産業の停止は不当だからだ」といい、同量の電力を石炭や天然ガス火力発電で生成すると60ユーロ、風力発電は85ユーロ、太陽光発電では450ユーロかかると説明した。
また、天然ガス火力発電が増えるとエネルギー費用上昇につながる上、安定供給面で問題があるとして、「ガローナ原発を閉鎖すればガス火力発電に5~10億ユーロを投じる必要があろう。火力発電は大気を汚染する上、ガスの供給をアルジェリアに頼ることになる」と語った。
スペインは天然ガスを全量輸入しており、その3分の1がアルジェリアからパイプラインやタンカーで輸送される。ガローナ原発の運命を決めるセバスティアン産業相は、国外燃料への依存軽減を公約している。
◆続々引退のなか
1960年代後半から70年代前半に建設された原子炉のうち、タービン火災で大きな損傷を負ったバンデロス1号炉は89年に停止、ホセ・カブレラ発電所は2006年に閉鎖された。06年半ば以降、原子炉の作動停止や自動停止発生回数は全国平均で3.13回。ガローナは4回停止したが、過去2年に安全に関する事故が報告されなかった唯一の原子炉でもある。エンデサのバンデロス2号炉は6回停止、イベラドーラのコフレンテス炉は7回も停止した。
だが、「ガローナ原発には1000の亀裂がある」として危険視する同国のグリーンピースなどの環境団体は「時代遅れで安全面の大きな問題に悩まされている」と主張、同原発の運転延長に反対している。
欧州各国の政府は化石燃料への依存度を下げ、二酸化炭素の排出量を削減するために原子力発電を推進している。英国は新たな原子炉建設を承認。既存の原子炉で電力の80%を発電できるフランスは、原子炉増設を目指している。1987年の国民投票で原子炉を封鎖したイタリアは、電力需要を石油や天然ガスに頼っているが、原発廃止決定を撤回することで合意。メルケル独首相は2021年前後までに全面的に原子炉の稼働を停止する計画を「非合理的な」行動基準だと切って捨てた。
サパテロ首相はガローナ原発の操業延長を認めるかどうかについては明言していない。(Gianluca Baratti)
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